カッコつけてビビらせる

時々BARに一人で飲みに行く。

なにをしに行くのか。

もちろんカッコつける為である。

「最近カッコつけてないな」と感じたら行く。

そして、ある程度カッコつけ終わったらお会計をする。

お金を払う時になるといつも思う。

「高いな」

「家で飲めばよかったな」と。

カッコつけるのにはお金がかかる。

しかし私は同時に、まだ本気でカッコつけていないことにも悔やむ。

BARに行ったらいつかはやりたいあれだ。

 

「あちらのお客様からです」

 

これをやらないとただのチキン野郎だけど、もちろん私は生粋のチキン。

「うわー、あんなキモい奴から酒が回ってきたわー」と思われたらどうしよう。

イッキ飲みされるかもしれない。

まるで学生時代の罰ゲーム扱いである。

そもそもなにを注文すればよいのか。

ビールなのか。

しかしすでに一杯目が終わっていたらカクテルなのか。

カクテルの場合でも、甘いものと苦めのもの、どちらで攻めるのか。

分からないことだらけだ。

では、来店した瞬間を狙うのはどうだろう。

 

「カラン、カラン。いらっしゃいませ。あちらのお客様からです」

 

たぶん混乱するだろう。

「え、待ち伏せ?こわっ」と思うかもしれない。

そして立て続けに「あちらのお客様」の私はにこやかに微笑みかける。

もうホラーである。

こうなったら、最終手段を使うしかない。

 

「相手のお勘定をそっと済まして帰る」

 

残されたカッコつけ方はこれしかない。

でも一言も話してもいない知らない人に、勝手に会計を済まされていたら、それはそれで少し怖い気もする。