中国がすごかったらしい

以前会社に勤めていた時のこと。

その会社の偉い人たちが数人で中国に行くことになった。

当時の中国は不動産バブルがピークぐらいのときだったと思う。

偉い人たちが数人で中国に行く理由は「視察」である。

だいぶ疑わしい理由であるが、実際に彼らは中国へ飛び立った。

そして一週間ほどして彼らは帰ってきた。

 

「経済の発展がすごかった」

 

彼らは偉い人たちなので、部下を並べて皆の前でそう喋った。

しかしそんなことはわざわざ行かなくても、TVやネットのニュースを見ていればわかる。

その目で実際に見たのなら、もっと具体性的な情報を聞きたい。

そして彼らは、続けてこう喋った。

 

「勢いがすごい」

 

勢いがすごかったらしい。

「なんの?」と疑問には思ったが、彼らは興奮した様子で更に続けた。

 

「成長の勢いがすごい」

 

子供の身長でも測っているのだろうか。

もっとちゃんとした情報が聞きたい。

そして数分後、彼らなりに成長の勢いを感じる理由をに説明してくれた。

 

「ビルがたくさん建っていた」

 

遠足である。

まさかいい大人が、ましてや会社の役員クラスの人間のからその言葉が出るとは思わなかった。

 

「人もたくさんいた」

 

もうやめてくれ。

小学性の作文を読まされた気持ちになる。

自分の子供ならまだいいが、他人の子供の作文を読むのは辛い。

 

「経済格差もすごかった」

 

少しひねってきた。

路上で物乞いをしている人のすぐ横に、高級車が止まっていたりしたらしい。

 

「街の人達の表情には、今の日本の若者にはすでに失われてしまった、未来への希望のようなものがあった」

 

最後は無駄に詩的になって、若者批判で〆る。

おきまりの着地だけには100点満点をあげたくなった。