言いたい事も言えない損な世の中じゃ

最近の世の中は言いたい事が言えない。

でも、言わないでいて欲しいことも多い。

「あのさ〜、本当は前から言いたかったんだけどさ〜」

この切り出しで始まる会話は十中八九デンジャラス。

相手が言いたいことを言おうとしている。

「言いたい事も言えないそんな世の中じゃ、ポイズン」と松嶋の旦那が言っているけど、言いたいことが言い放題な世の中もそれなり猛毒。

「ずっと言いたかったけど、言えなかった」になると長期間体内で熟成されるので、ポイズンがより一層濃くなり、発酵もしている。

そんな婆ちゃんの家の漬けものみたいなやつは自分一人で食べきってほしい。

配るな。

しかもそれを別れ際に配ってくるとなると、それはもうほぼ化学兵器。

相手を殺しにいく覚悟でいる上に、自分の体内は浄化しようともしている。

「ダメージを与えながら自分は回復」なんて都合が良すぎる。

まるで強めのバトエン(バトル鉛筆)だ。

でも、自分の体内にポイズンを持ち続けるのは確かに辛い。

菜々子の旦那もそれは承知しているらしく、「そんな世の中じゃ、ポイズン!」とキレよく発した後に、「俺は俺を騙すことなく生きていく。OH OH〜」と大分ノリノリになっている。

自分を騙していない人間の精神状態はすこぶる良好らしい。

「OH OH〜」なんて今まで一回も言ったことないもの。

たぶん私も自分を騙さなければ、朝起きたら開口一番に「OH OH〜」と言えるくらいの快適な毎日を送れるのかしれない。

世の中には「毒(言いたいこと)」を吐いて自分がノリノリになるか、毒をグッと自分の中に押し込んで感染者を減らそうとするか、この二つのタイプがいるらしい。

じゃあ、もしも全員が吐いて吸っての感染者になり、ノリノリ系オンリーの世の中になったらどうなるのだろう。

ウォーキングテッドの世界なら、主演がゾンビで、ヒロインもゾンビで、元々ゾンビの奴は変わらずゾンビということになる。

悪くない気もする。

世の中から正常な奴がいなくなって、異常な奴しか存在しなくなれば、異常は正常になる。

逆に辛いのは、元祖正常野郎が1人で頑なに感染を拒んで、自分だけ異常にならないこと。

「自分以外が全員感染者」という、まるで雑に作った映画のような世界を生きてなければいけなくなる。

どうせなら全員で「OH OH〜」しようぜ。