言われると嬉しい悪口

人から悪口を言われて嬉しい人はいないと思う。

でも稀にだけど「言われると嬉しい悪口」というのもある。

人によっては「この豚め。私の靴をお舐めなさい」とか言われて喜ぶ人もいるけど、これは悪口ではなくて命令であり、プレーでもある。

もしくは職場でミスをした時に、少し気になっている女性の同僚に「ほんとっ、あんたって間抜けね」とか言われると嬉しいかもしれないけど、これも少し違う。

「間抜け」は悪口としては少し弱いし、この場合はただ好きな人に言われたから嬉しいのであって、もしこれが全然好きじゃない人に言われてたら何かしらのハラスメントとして捉えて、訴訟も視野に入れる。

私がこの前、散歩をしていた時の出来事。

私の家は割と浅草に近いので、よくその辺りに散歩に出かける。

浅草は観光地としも人気があるので、外国人も多い。

その日私は夜の浅草を歩いていた。

人とすれ違う時はお互いが体を避けないと接触してしまうような、少し細い道を選んで歩いていた。

その狭い道を歩いていると、向かいから外国人を歩いてきた。

遠目に見た感じでは、その外国人は白人の男性で、体は大きくて少しイカツイ。

あとだいぶ蛇行して歩いている。

近づいて分かったけど、この白人男性は缶ビールを片手に持って、だいぶ酔っぱらっている様子。

このままだと私とすれ違う時にぶつかるかもしれない。

こんな怖そうな人とはぶつかりたくないので、彼とすれ違う時にはできるだけ体を背けることによって、私はなんとかぶつからずに通り過ぎることができた。

無事難関を突破して安心してたその矢先、その白人男性は急に振り返り、私に向かってこう言った。

 

「ファッキュー」

 

「死ね」である。

見ず知らずの外国人に「死ね」と言われた。

悪口としては最も上のクラスにあたる、最低の言葉だと思う。

ここは怒ってもいいのかもしれない。

しかし、その時は私は思った。

嬉しい。

気分はもうエミネム。

島国根性丸出しだけど、なんかやっと自分も、グローバルな人材になれた気がした。

出来ればあと「マザーファッカー」とかも言ってほしい。

しかし、その白人男性は私の期待を裏切って千鳥足で去って行ってしまった。

少し寂しい気持ちになった。